ラジオ2008年10月(Oct.2008)

 
いらっしゃいませ。バール・ボッサにようこそ。バール・ボッサは東京、渋谷に現実に存在するボサノヴァのかかるバーです。あなたもバーでお酒を飲みながらゆっくりくつろいでいるような気持ちで2時間お付き合いください。

1.trio202/so danco samba
2.stanley cowell/come sunday
3.marcia lopes/minha nossa senhora

林「いらっしゃいませ」
女性「こんばんは」
林「オススメのワインですよね」
女性「はい。もう秋ですから、秋を感じるのをお願いします」
林「じゃあ、濃いワインにしましょうか。シャトーヌフ・デュ・パプなんてどうでしょうか」
女性「あ、私、フランス語やってたんで意味だけならわかりますよ。シャトーヌフ・デュ・パプ、直訳すると『パパの新しいお城』っていう意味ですよね」
林「そうです。パパ、ローマ教皇のことですね。そのヨハネス22世が1316年にフランスで新しくワインの生産地を開拓したんです。それがシャトーヌフ・デュ・パプ村、直訳すると『パパの新しいお城』の村ですね」
女性「ローマ教皇が14世紀につくったワイン畑なんですか。うーん、ヨーロッパの長い歴史を感じますね」
林「ええ。で、このワインは13種類のブドウ品種を使ってもいいと認められているのが特徴なんです」
女性「え、ブドウ品種というのはカベルネソーヴィニヨンとかマスカットとか、そういうブドウの品種のことですよね。それを13種類使ってもいいっていうのはどういう意味なんですか?」
林「フランスは政府がブルゴーニュはピノ・ノワールという品種だけとか、シャブリはシャルドネという品種だけとかって言う風に法律で決めているんですね。AOC制度っていうんですけど」
女性「政府が決めているんですか」
林「ええ、ワインだけじゃなくて、チーズやお肉なんかも決まっていますよ」
女性「あの、話しはそれるんですけど、日本でウナギとか鶏肉とかで偽装問題が色々とありますよね。浜松産って言っておいて本当は中国産だったりとか」
林「それです。フランスはそういう偽装問題を避けるために1936年から政府が法律でボルドーワインを名乗る条件はこういうブドウ品種を使って、こういう醸造方法で、こういう味でなくてはいけないって感じで規制するようにしたんです」
女性「へえ、1936年からそんな法律があるんですか。フランスってすごいですね」
林「ええ、農業先進国と言われる所以ですよね」

4.tamba trio/danielle
5.miltinho/amar de novo
6.osmar milito/que bandeira

女性「それでこのシャトーヌフ・デュ・パプというワインはそのフランスの法律で13種類のブドウを使ってもいいと認められているというわけですね」
林「そうです。ところでこのシャトーヌフ・デュ・パプ村には大きい会社のようなワインメーカーから小さい個人農家まで色んな生産者がいるのですが、それぞれがこの13種類の品種を組み合わせることで色んなワインの個性を表現できるんです」
女性「あ、なるほど。花井さんちが一家でつくっているワインもあれば、サントリーさんが大きい工場でつくっているワインもあって、どれもがシャトーヌフ・デュ・パプというワインなんだけど、もちろん色んな味のワインがあるってことですね」
林「はい。で、今日オススメするシャトーヌフ・デュ・パプはドメーヌ・ポンティフィカルというところがつくっています。さて、このドメーヌという言葉は何でしょうか?」
女性「わかりますよ。英語でいうドメインですよね。生産者って意味でしょうか」
林「そうですね。ワインのラベルって難しいのですが、このドメーヌという言葉の後ろがそのワインをつくっている家族や会社の名前を表しています」
女性「なるほど。例えばこれが日本だとドメーヌ・ハナイは花井さんちのワイン、ドメーヌ・サントリーだと会社サントリーのワインって感じですね」
林「はい。で、このドメーヌ・ポンティフィカルはグルナッシュとシラーという品種を中心に作っています。まあ飲んでみましょうか」
女性「やっと飲めるんですね。(ちょっとおいて)うわ、色が濃いですね」
林「ええ、シャトーヌフ・デュ・パプ村は南フランスのコート・デュ・ローヌ地方にあるんですが、こういう濃いワインは南フランスの特徴ですね。香りはどうですか?」
女性「あ、これ、知ってます。胡椒みたいな香り、スパイシーっていうんですよね」
林「そうですよね。あとお花みたいな華やかな香りもしますね。じゃあ飲みますか」
女性「ええ。(ちょっとおいて)。うわ、とても濃いんですがザラザラしたタンニンがあるわけじゃなくてまろやかな濃さですね。でこのワインにあうボサノヴァは?」
林「濃くてまろやかで、かつ華やかってイメージですよね。ナナ・カイーミとかホーザ・パッソスなんてどうでしょうか」

7.nana caymmi/sem voce
8.rosa passos/desilusion


女性「バーにはフライヤーがたくさん置いてありますよね」
林「ええ」
女性「これを一つ一つチェックするだけで、そのバーにはどんなお客さんたちが集まっているのかがわかって面白いですね」
林「ええ、このフライヤーがきっかけで色んな風に話しが広がっていったりとかして、お客さんとのコミュニケーションのツールにもなりますよね」

女性「中島ノブユキの24のプレリュードとフーガ…プレリュードとフーガってバッハが作曲したあれですよね。これは何ですか?」
林「中島ノブユキさんっていう作曲家がいるんですけど、その人がバッハと同じようにプレリュードとフーガを今作曲しているんですね。バール・ボッサでも時々その演奏会を開いているんですけど、このフライヤーは12月5日にある集大成的な演奏会ですね」
女性「へえ。会場はめぐろパーシモンホールってところなんですね。これも要チェックですね」
林「じゃあ、中島ノブユキさんの曲も聴いてみますか」

中島ノブユキ/ヴォカリーズ

女性「この『ジョアンだけがボサノヴァじゃない』っていうすごいタイトルのフライヤーはまたいったい何なんでしょうか」
林「これはNY在住のミカさんっていうピアニストがブラジルのベーシストとドラマーを連れて日本でライブツアーをやるっていう企画ですね」
女性「このベーシストのセルジオ・バホーゾって言う人が『すごい!』って感じで書いていますが、この人がすごいんですか?」
林「テノーリオ・ジュニオールという伝説のピアニストのエンバーロというアルバムがあってそれに参加しているあのセルジオ・バホーゾが日本に来るっていうと飛び上がっちゃう人が1万人はいますね」
女性「これも要チェックですね。11月15日東京TUC…広島の福山や岡山、神戸、大阪でもやるんですね。音源はないんですか」
林「実は未発表音源が特別に何故かここにあるんです。聞いてみましょうか」

mika/tematrio
mika/imagem

女性「このワールド・ミュージック・スタイルっていうフライヤーは何なんですか?」
林「あ、これは文化放送が新しく始めたデジタル・ラジオのフライヤーなんです」
女性「へえ。ユニーク・ザ・レディオっていうんですね。あれバール・ボッサの名前もありますよ。マスターもしかして何か関わっているんですか?」
林「あの、僕も番組をやっているんですよ」
女性「ええ!そうなんですか!今度聞いてみます」
林「是非」

alberto rosenblit/de vem com a vida
carlos fernando & toninho horta/joana francesa
ivan lins/o passarinho cantou


林「この間、アラジンが来たんですよ」
女性「アラジン、ですか。でもアラジンって中東の人ですよね?イスラム教じゃないんですか?お酒飲んでも大丈夫なんですかね」
林「そういえばそうですね。でも楽しそうにお酒飲んでましたよ」
女性「あ、でも私も昔、アラジンが美女とかはべらしてお酒を飲んでいる絵を見たことあるような気がします。で、アラジンがどうかしたんですか?」
林「ええ、忘れ物をしたんですよね」
女性「あ、バーの忘れ物って困りそうですね。もちろんアラジンさんって名詞なんて置いていってないですよね」
林「ええ、アラジンの連絡先ってちょっとわかんないですよね」
女性「で、何を忘れたんですか、アラジンさん」
林「魔法のランプなんです」
女性「え、もしかして、あのこすったら魔法使いが出てきて『願い事を三つかなえてやろう』ってやつですか?やったじゃないですか」
林「それで困ってるんですよ」

carlos malta e pife muderno/tupyzinho
elis regina/o bebado e a equilibrista



女性「ええ!アラジンのランプ、使っちゃいましょうよ。大丈夫ですよ。そういう運命なんですよ」
林「何か願い事三つって思いつきます?」
女性「ええ、私なら○と○と○ですね」
林「そうですか。簡単に決まって良いですね」
女性「じゃあ、私が一緒に考えてあげます。まず、現実的にお金は要りますよね?」
林「まあお金欲しいですけどね。でも何十億円ももらったら僕はこのお店やめちゃうと思うんですよね。そしたら、こんな風に色んな人との面白い出会いって言うのもなくなっちゃうわけだし…」
女性「わかりました。マスター、ルックスですよ。イケメンになりましょうよ」
林「いや。僕がそんなにカッコよくないからこそ、みんな男性も女性も安心してこのお店に来てくれているって正直言って思うわけなんですよね」
女性「なるほど…。じゃあ、世界平和、どうですか?マスターいつも言っているじゃないですか世界平和ですよ」
林「ええ、世界平和はもちろん望みますけど、それは魔法の力とかじゃなく、僕達人類がひとつづつ試行錯誤をしながら思想を積み上げていって、人類みずからの力で達成すべきことだと思うんですよね」
女性「マスター、つまんない人ですね」

walter wanderley/soulful strut
briamonte orq./tema de cristina
briamonte orq./zip
roberto paiva/se todos fossem iguais a voce


 

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