ラジオ2008年8月(Aug.2008)

 
いらっしゃいませ。バール・ボッサにようこそ。バール・ボッサは東京、渋谷に現実に存在するボサノヴァのかかるバーです。あなたもバーでお酒を飲みながらゆっくりくつろいでいるような気持ちで2時間お付き合いください。
1.astrud gilberto&paulo jobim/samba do soho
2.sergio mendes&brasil77/the waters of march
3.ed lincoln/catedral
4.antonio adolfo/ve

林「いらっしゃいませ」
女性「シャンパーニュをお願いし…。うーん、どうしようかな…。でもやっぱりシャンパーニュをお願いします」
林「どうしたんですか?」
女性「実はこの間、シャンパーニュで失敗してしまったんです」
林「どんな失敗ですか?」
女性「友達の結婚式だったんですけど、あんまり食べないでシャンパーニュばっかり飲んでたらおもいっきり酔っ払ってしまって、かなりダメダメな状態だったみたいなんです」
林「なるほど。お腹がすいている時にシャンパーニュを流し込むと泡が胃を刺激してアルコールが吸収されやすくなるらしいですね」
女性「ええ!そうだったんですか」
林「あと、緊張している時って自分がどれだけ酔っ払っているのかが判断しにくいらしいんです。だから気付かずにグイグイ飲んでいるといつのまにかおもいっきり酔っ払っていたなんてことになるらしいですよ」
女性「なるほど。あの日の私の失態に全部あてはまりますね。空腹にシャンパーニュは危険、緊張している時は自分の酔いに気付きにくい、ですね。メモしておきます」

5.astrud gilberto & shigeharu mukai/champagne & caviar
6.o quarteto/vou deitar e rolar
7.mpb4/passaredo
8.azymuth/circo marimbondo

女性「あの、マスターは一人だけ全然お酒を飲んでいないのに、お客さん達は全員ムチャクチャ飲んでて、すごく酔っ払っているって状態、結構面白い風景ですよね。一人だけ素面(シラフ)だと『みんなバカだなあ』なんて思ったりしません?」
林「まあ、でもそれが仕事ですからね。毎日10年以上もそういう空気でいると慣れてしまいますよ」
女性「あ、そうか。バーが職場で今は勤務中なんですよね。不思議な仕事ですね」
林「昔、バーテン修行をしていた時、先輩に『お酒は日本で唯一の合法的なドラッグだから』って言われたことがあるんです」
女性「ええ!お酒が合法ドラッグですか」
林「ええ、やっぱり毎日お酒を出してて思うのは、『アルコールはドラッグだな』ってことですね。多量に摂取すると言動や行動が異常になったり性的なことを考えるようになるってやっぱり薬物の影響ですよね」
女性「なるほど、そうですね。ちょっと飲んで顔が赤くなったり気持ちが楽しくなってきたりっていうのも明らかに薬物の影響ですね。そんな風に考えたことなかったです」


9.edson e tita/eu amo jesus
10.doris monteiro/ate quem sabe
11.frank sinatra & antonio carlos jobim/baubles,bangles and beads
12.paulo bellinati/imagem

女性「アルコールはドラッグかあ。でもなんで私達はお酒を飲むんでしょうかね」
林「やっぱり日常から抜け出したいんでしょうね」
女性「みんなそんなにつらい日常生活をおくっているんですかね」
林「そうですね。酔っ払ってムチャクチャになっちゃう人って意外とキチっとスーツを着てるマジメそうなサラリーマンの人が多いですね」
女性「堅い職業の人って色々と我慢してそうですもんね。あ、営業職の人が飲む席では逆にすごく横柄になるって話聞いたことあります。マスターはどういう酔い方に困ったりします」
林「うーん、やっぱりクドイのと怒りっぽいのとは困りますね。あと酔っ払ってすごく楽しそうになっているのは僕は基本的には好きですよ」
女性「必ず泣く人とかいますよね。ああ泣いてすっきりしたいんだなあって感じの。あとエッチになる人っていますよね」
林「いますね。何か普段抑えていたものが外れちゃうんでしょうね」
女性「あ、いつもは抑えつけて我慢しているんだ。エッチになるのを」


13.marcos valle/ele e ela
14.moacir santos & ed motta/orfeu
15.edson frederico/multidao
16.osmar milito/maracatu atomico

林「あ、中村さん。いらっしゃいませ」
中村「こんばんは」
林「あ、こちら中村智昭(トモアキ)さんです。ムジカノッサっていうイベントをやったりCDを出したりしてて、本職はDJさんです」
女性「こんばんは。長洲です」
中村「こんばんは。中村です。あ、林さん今日は赤ワインを3杯飲みます。軽いのからお願いします」
女性「いつもそうやって飲むんですか」
中村「ええ。その日の気分や状態で何杯飲むか決めて、後は林さんに順番に出してもらってるんです。あ、今度、僕、ジャズのコンピレーションCDを出すことになったんです。これなんですけど…」
女性「へえ。面白そうですね」
林「中村さん、何か今、バール・ボッサでかけられそうな曲ありますか?」

女性「中村さん、面白い方でしたね」
林「彼のDJ、すごく良いらしいですよ」
女性「良いらしいというのは聴いたことがないんですか?」
林「ええ、イヴェントとかライブとかに行けないのがこのバーテン業の悲しいところなんです」
女性「なるほど」

1.marcia lopes/joana francesa
2.olivia byington/outra vez
3.rosa emilia/carioca da gema


女性「最近誰か面白いお客さんは来ましたか?」
林「うーん、面白いお客さん…」
女性「あの、人間じゃなくても良いですよ」
林「人間じゃなくても良いですか。でしたら最近はたまにバクが来店しますね」
女性「バクって…ええと夢を食べる動物でしたっけ」
林「そうです」
女性「ええと、マスターはそのお客さんがすぐにバクってわかったんですか」
林「ええ。ロワールの白ワインを出したら『何かこのワインにあうおつまみが欲しい』って言うんですね。だから僕が『オリーブとかどうでしょうか』って言ったら、そのお客さんが『いや俺は夢しか食べない』って答えたんです」
女性「なるほど。それでこれはバクだなって判明したんですね」
林「そうです」
女性「で、マスターは何か夢をおつまみに出したんですか」
林「もちろん出してないです」
女性「ええ、そうなんですか。夢なんて減るものじゃないし、バクの好みを聞いて適当に出しちゃえば良かったのに」
林「ええ、夢は減りますよ」
女性「減っても夢なんてまたつくれば良いじゃないですか。夢なんて無限ですよ」
林「いや年を取ってくると夢って減っていくものなんです」
女性「そうなんですか。私はまだまだたくさん夢がありますけどね」
林「そうですか。例えばどんな夢なんですか」
女性「秘密です」

4.antonio carlos jobim/vivo sonhando
5.luiz claudio/nos
6.conjunto sambacana/tarde azul
7.maria toledo/oba oba
8.reginaldo bessa/no tempo da vovo

今日は2時間おつきあいいただきどうもありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。お相手は林伸次と

 

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