いらっしゃいませ。バール・ボッサにようこそ。バール・ボッサは東京、渋谷に現実に存在するボサノヴァのかかるバーです。あなたもまるでバーでお酒を飲みながらゆっくりくつろいでいるような気持ちで2時間お付き合いください。
1.boca livre/bicicleta
2.doris monteiro/dia de feira
3.emilio santiago/minha esquina
4.nana caymmi/acorda que eu quero ver
林「いらっしゃいませ」
女性「こんばんは。ええと、いつもシャンパーニュだとつまんないから、何か泡が入っている飲み物でオススメはありますか?」
林「もう夏ですし、モヒートなんてどうでしょうか」
女性「あ、私、モヒートって大好きなんです。ミントが入っているあれですよね」
林「ええ。キューバのカクテルでヘミングエイが好きだったことでも有名ですね」
女性「じゃあ、モヒートお願いします」
しばらくおいて…
女性「うーん、さっぱりしてておいしいです。モヒートってお店によって味が色々違いますよね」
林「ええ。モヒートは色んなレシピがあるみたいなんですけど、僕はキューバ帰りの人に教えてもらったレシピです」
女性「キューバもいつか行ってみたいですね」
5.nara leao/nasci para bailar
6.benito di paula e wando/nega de obaluaeネガ・ジ・オバルアエー
7.wilson simonal/cai,cai
8.alcyvando luz/catuleco de dende
女性「あの、私、何度か来てて、マスターは私の名前とか職業とか気になったりしないんですか?」
林「気になりますけど、バーテンダーはお客様の名前や職業を聞いちゃいけないことになっているんです」
女性「ええ、どうしてなんですか?」
林「色々と理由はあると思うのですが、たぶんお客様との距離感を大切にしているんじゃないでしょうか」
女性「距離感?」
林「バーテンダー心得で一番有名なのに『初めて来たお客様は常連のように、常連のお客様は初めてのお客様のように接客をしろ』という言葉があるんです」
女性「初めてのお客さんは常連のように接して、常連のお客さんは初めてのように振舞うんですか」
林「ええ。でも本当にそうやって接客したらちょっとおかしいとは思うんです。だからこの言葉はどんなお客様とも近過ぎず遠過ぎず距離を保って接客しなさい、という意味だと思うんです」
女性「なるほど。じゃあ名前と職業を聞かないというのは、そこまで深く立ち入らないという意味なんですね」
林「ええ。でもちょうど良いですよ。お顔とお酒や音楽の好みは知っているけど、名前と職業は知らないって関係」
女性「そういう関係って都会的ですね」
9.dick farney/sabado em copacabana
10.luiz bonfa/menina flor
11.os cariocas/samba da pergunta
12.briamonte orquestra/zip
女性「他に何かそういうバーテンダーのルールみたいなのってありますか?」
林「他のお客様の噂話をしない、ですかね」
女性「それはあれですよね。やっぱり不倫とか浮気とかそういうばれちゃいけない関係があったりするからですよね」
林「まあそれもありますけど、普通に『さっきここに座っていた人は』なんて噂をするのも禁止ですよね」
女性「あ、自分もそういう風に噂されるのかもって不信感を与えちゃいますね」
林「ええ。」
女性「バーテンダーのルールって実は普通の人の関係でも応用できそうですね」
林「ええ。他人とのコミュニケーションを考えるには良い材料とだ思いますよ。でも実は僕、かなりおばちゃん体質なんで本当は噂好きでついつい喋っちゃうんですけどね」
女性「ダメじゃないですか」
13.candinho/companheira
14.olivia byington/luciana
15.marcia lopes/sabia
16.moacir santos & djavan/sou eu
今回、選曲していただいた原口大助さんは「マジメ、あるいは誠実」がキーワードです。原口さんは普通の企業で働きながらヒップ・ホップやハウスからブラジルものまで様々なジャンルのDJをされています。でも彼は器用とか移り気というわけではなく、そのジャンルの音楽に前から向き合いまるで研究するかのようにそのジャンルの音楽の基礎から学習していきます。最近「音楽は耳や体で感じるものでウンチクなんて関係ない」という聞き方が増えている中、かなり稀有な存在だと思います。
今回、原口さんがこの番組のために選曲してくれたボサノヴァはそんな原口さんの考えている「ボサノヴァ感」がすごく伝わってきます。1958年に始まったボサノヴァの歴史の全てをほんの20分弱で感じ取ることが出来るようになっています。ちなみに、今回のこの原口さんの音源はすべてオリジナルのアナログ・レコードからだそうです。普通に考えてみて現在の中古レコード屋さんの市場価格でたぶん全部で20万円は超えそうです。その辺の原口さんのこだわりも聴いてみて下さい。
17.DONATO E SEU TRIO/MUITO A VONTADE
18.QUARTETO EM CY/IMAGEM
19.TAMBA TRIO/SONHO DE MARIA
20.EDU LOBO/CANDEIAS
21.CAETANO VELOSO/DINDI - EU SEI QUE VOU TE AMAR
22.LUIZ BONFA/BOTICARIO
23.JOAO GILBERTO/JOAO MARCELO
24.ELIZETE CARDOSO/CHEGA DE SAUDADE
林「最近よく来る男性二人組みがいるんです」
女性「どんな人たちなんですか?」
林「たぶんマスコミ業界だと思うんです」
女性「どうしてマスコミ業界だってわかるんですか?」
林「業界用語を使うんです」
女性「あ、それはワイハとかC(チェー)万とかってやつですね」
林「今時そんな人はいないです。例えばこの間『あ、マスター今の注文ちょっとペンディングで』って言ったんです」
女性「ああ、ペンディングですか。保留って意味ですよね。でもそれって業界用語ですか?」
林「僕は大阪の魚屋のおじさんと秋田の農家のおばさんがわからない言葉は業界用語だと考えているんです」
女性「まあ秋田の農家のおばさんが『あ、キャベツの収穫の件、ちょっとペンディングで』とは言わないですよね。他はどんな業界用語を使うんですか?」
林「あとは『マスター、僕達このお店、ツボなんですよ』って言ってました」
女性「ああ、確かに業界っぽいですね」
25.antonio carlos jobim/voce vai ver
26.rosa passos & ron carter/sorriu para mim
27.rosalia de souza/parte de seu mundo
28.pamela driggs&romero lubambo/the ducks
林「で、その業界人二人組みが先日ずっとボサノヴァについて話し合っていたんです」
女性「はい、業界人がボサノヴァ…」
林「一人の方が『ボサノヴァは今すごく流行っている』と言ってて、もう一人の方が『いや、今時もうボサノヴァは古い』って言ってたんです」
女性「へえ、ボサノヴァが流行っているかどうかって話題ですね。でもボサノヴァって街でよく聞くし、今年は生誕50周年なんですよね」
林「ええ」
女性「マスターはどう考えるんですか?」
林「その『ボサノヴァなんてもう古い』っていう人はたぶん数年前にカフェ・ミュージック・ブームが流行った時のこととか、90年代にクラブ・ミュージックでブラジルで踊るのが流行った時のこととかを言ってるんだと思うんです」
女性「なるほど。じゃあやっぱりもう古いってことなんでしょうか」
林「でも、実はボサノヴァってその前の80年代終わりにもワールド・ミュージック・ブームと小野リサさんで流行っていますし、80年前後にもクロス・オーヴァー・ブームで流行ってますし、そうやって考えると5,6年おきに何度もずっと50年間流行り続けているんです」
女性「そうなんですか。じゃあ、古いとか流行っているっていうのはあまり意味がない問題なんですね」
林「ええ。まあ全ての音楽に対して、これが新しいとか古いとかって言うのはあんまりかっこいい話しとは思えないですけどね」
女性「今日はなんだか厳しいですね」
29.sergio mendes & brasil66/mas que nada
30.marcos valle/samba de verao
31.sambalanco trio/sambinha
32.sergio mendes & brasil66/what the world needs now is love
今日は2時間おつきあいいただきどうもありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。お相手は林伸次と
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