ラジオ2008年 6月(Jun.2008)

 
1.elis regina/madalena
2.emilio santiago/batendo a porta
3.doris monteiro/solidao
4.djavan/para raio

林「いらっしゃいませ」
女性「こんばんは。ええと…」
林「シャンパーニュですか?」
女性「あ、はい。あの、よく覚えてるんですね」
林「はい。バーテンダーの仕事で一番大切なのはお客様のお顔と飲み物の好みを覚えることなんです」
女性「そうなんですか。私、人のことを覚えるのが苦手で…。あと、名前とか覚えるのって大変ですよね」
林「名前って難しいですよね。名前を教えてもらった瞬間にその名前の話題をするのが効果的とかって言いますけどね」
女性「あ、なるほど。この苗字って珍しいですね、とか、ご両親はどうして○○さんって名付けたんですか?って感じの会話にしちゃえば忘れないってわけですね」
林「ええ、あとその瞬間からすぐにその人の名前を呼びかけるっていうのも良いらしいです。何度か声に出すとその名前が頭の中に定着するらしいですよ」
女性「なるほど…。ふーん、バーテンダーってそんなことも日々考えているんですね」

5.ed lincoln/ali tem
6.os farroupilhas/azul contente
7.lucio alves/tudo acontece comigo
8.maria creuza/queixas

女性「2杯目に何か頂きたいんですが…赤ワインで何かオススメのものってありますか?」
林「ビオディナミーで作られたワインってご存知ですか?」
女性「あ、それってオーガニックのことですよね。農薬を使ってなかったり酸化防止剤が入ってなかったりってやつですよね」
林「そうです。あとは月の満ち欠けにあわせて育てたり収穫したりするのもビオディナミーの特徴ですね」
女性「月の満ち欠けですか?ちょっとあやしい感じがしますね」
林「そうですか?でも僕は月の満ち欠けってかなり地球上の生物に大きな影響を与えていると思いますよ。例えばバーでは満月の夜って喧嘩とか飲み過ぎで潰れちゃったりとかって感じのトラブルがすごく多くなるんです」
女性「ホントですか?」
林「ええ、統計的にも満月の夜が凶悪な犯罪率も高くなるそうですよ」
女性「へええ、月ってそんなに影響力があるんですか。今度からちょっと月の形を意識的に見てみることにしてみます」

9.ana caram/fly me to the moon
10.oscar castro neves/air on a 6 strings
11.nana caymmi/ahie
12.marcos valle/proton eletron neutron
13.marilia/sagarana

女性「ボサノヴァ、色々聴き始めてるんですが、ひとつちょっと疑問があるんです」
林「何ですか?」
女性「ボサノヴァの曲で『なんとかのサンバ』ってタイトルが多いですよね。でもサンバってあのカーニヴァルの派手な音楽のことじゃないですか。ボサノヴァとは全然関係ないような気がするんですけど…」
林「あ、ええとですね、ボサノヴァもサンバの一種なんです」
女性「ええ??どういうことですか?」
林「あのー、アメリカにR&Bという黒人音楽がありますよね。それとブラジルのサンバって同じような位置なんです」
女性「ええと、どういう意味なんでしょうか」
林「例えば、ヒップ・ホップやロックン・ロールもある意味R&Bの一種ですよね。そんな風にブラジルではディスコっぽいサンバもあれば、シャンソンみたいなサンバもあるし、ボサノヴァみたいなソフィスティケイトされたサンバもあるわけなんです」

14.miucha & antonio carlos jobim/samba do aviao
15.sergio mendes & brasil'66/one note samba
16.marcos valle/summer samba
17.luiz bonfa/samba de orfeu
18.caetano e gil/desde que o samba e samba


私が始めて伊藤ゴローさんに会ったのは14年前のことでした。昔、東北沢にラストチャンスレコードというお店があって、そこはジャズとクラシックと映画音楽とボサノヴァの古いレコードだけという夢のような場所だったのですが、そこの店長の江尻さんという人の紹介で私はゴローさんと知り合いました。最初はゴローさんからボサノヴァ・ギターを習うために会っていたのですが、途中からはゴローさんの音楽世界を教えてもらうために会うようになりました。私の音楽の聴き方はゴローさん以前と以降とで全く変わってしまいました。それまで私は音楽は「歌やハーモニーを聴くもの」だと考えていました。たとえそれが歌詞のないインストルメンタルの曲でも私はメロディーを歌として聴いていました。しかしゴローさん以降は「音楽は複数の音の集まりとその物語」として聴くようになりました。言葉にしてみるといったい何のことなんだって感じですが、ゴローさんの音楽世界は20代半ばの私の狭い音楽観を壊してくれて、代わりに大きな世界地図と高性能の天体望遠鏡を与えてくれたような衝撃でした。
ゴローさんにはバール・ボッサの開店の時から色々とお世話になりました。お店の天井の白いペンキをお正月に塗ってくれたのもゴローさんですし、小さい看板のライトの配線をしてくれたのもゴローさんです。お店でゴローさんのボサノヴァ・ギター教室もやってもらいましたし、ライブも何度もしてもらいました。お店の大切な思い出です。今回ナオミ&ゴローの新譜が出るということで「伊藤ゴロー特集」というのをしてみます。では聴いて下さい。

19.moose hill/book of days
20.naomi&goro/um selo
21.naomi&goro/what child is this!
22.moose hill/do re mi fa song
23.naomi&goro/jou jou balangandas

ゴローさんからのコメント

24.naomi&goro/turn turn turn
25.naomi&goro/bon bon
26.moose hill/wolf song 2
27.moose hill/ノスタルジア

林「最近よくライオンがお店に来るんです」
女性「へー、ライオンですか。百獣の王ですよね」
林「あ、信じていないですね」
女性「信じてますよ。そのライオンがマスターの恋心を食べちゃって困っているんですよね」
林「違います」
女性「ええと…、じゃあわかりました。いつも大酒を飲みすぎて来る時はライオンだったのに帰る時は酔っ払っちゃってトラになってるんですよね」
林「違います」
女性「ええと…、じゃあ…」
林「あのクイズじゃないです。ライオンは色々と悩んでいてそれの相談もかねて夜な夜な飲みにきているんです」
女性「ライオンってどんなお酒を飲んでいるんですか?」
林「うちはゴディヴァのチョコレート・リキュールを置いてるんですけど、それをチビチビって感じでなめるようにしていつも飲んでいますね」
女性「ふーん、意外ですね。もっと豪快にテキーラとか強いお酒をガンガン飲みそうですよね」
林「ですよね。でもライオン自身はそういう荒くれ者イメージがとてもつらいらしいですよ」
女性「そうなんですか?でもアフリカのサバンナとかでシマウマを食べたりしていますよね」
林「あれはテレビ特有のやらせなんだそうです。撮影が終わったあとでシマウマやテレビ局の人達といっしょに『今日はお疲れ様でした』って感じで飲みに行ったりもするそうですよ」
女性「へー、そうなんですか。で、ライオンさんはどんなことを悩んでいるんですか?」
林「ライオンは本当はパティシエになって、小さいケーキ屋を始めるのが夢らしいんですね。でもどのケーキ屋もライオンなんか雇ってくれないらしくて落ち込んでるというわけなんです」
女性「あ、そうなんですか。パティシエなんですか…ライオンさんが作るケーキって食べてみたいですけどね」
林「ですよね。で、ライオンは『ダバダバ・スキャットのボサノヴァ』が大好きで僕はいつもライオンが来るとそういう可愛いボサノヴァばかりを選んでかけているんです」
女性「へー、私も聴いてみたいです。ライオンさんが好きなダバダバ・スキャットのボサノヴァ」

28.os tres brasileiros /fim de semana em guaruja
29.luiz bonfa & maria toledo/sambura
30.astrud giberto/bossa na praia
31.marcos valle /pepino beach
32.edson e tita lobo/uma bencao

 

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