ラジオ2008年 5月(Mar.2008)

 
 いらっしゃいませ。BAR BOSSAは現実に渋谷にあるボサノヴァのバーですが、あなたも、バーでお酒を飲みながらボサノヴァでも聴いているような気持ちで2時間お楽しみ下さい。
1.evinha/que bandeira
2.joyce/monsieur binot
3.miucha & a.c.jobim/comigo e assim
4.joao gilberto/aquarela do brasil

林;いらっしゃいませ。
女性;こんばんは。カウンター良いですか?
林;あ、どうぞ。
女性;あの…グラスでシャンパーニュをいただけますか。
林;はい、かしこまりました。一杯目にはシャンパーニュってお洒落ですね。
女性;あ、父がいつもどんなお店に入っても一杯目は「泡が出ているお酒」って決めていたんです。だから居酒屋だったりしたらビールなんですけど…ここだとシャンパーニュかなと思って。
林;なるほど。

5.doris monteiro/maita
6.maria creuza/de conversa em convers
7.emilio santiago/bufete e cascudo
8.nana caymmi/brisa do mar

女性;シャンパーニュってやっぱり泡が綺麗ですよね。いつまでも小さい泡がグラスの底から可愛く健気に出続けて。
林;そのシャンパーニュのグラスを耳元に近づけてもらって良いですか?
女性;え?こうですか?
林;はい。小さく泡が「パチパチ」って弾ける音がしますよね。
女性;あ、します。
林;この「パチパチ」っていう音をフランス人は「天使の拍手」って呼ぶらしいんです。
女性;へえ〜
林;たぶん天使があなたの未来を今「これからきっと良いことがあるよ」って祝福しているんだと思いますよ。
女性;ふーん。マスターってキザなんですね。

9.edson e tita/amor eterno
10.sueli costa/sabe de mim
11.elis regina/e so tinha de ser com voce
12.p.p.castro neves & m.legrand

女性;あの、基本的な質問して良いですか?
林;どうぞ。
女性;ボサノヴァってどこの国の音楽なんですか?
林;ブラジルですよ。
女性;あ、そうなんですか。フランスとかそっちの方なのかと思ってました。
林;意外ですか?
女性;ええ。だってブラジルって言うと「情熱」とか「カーニバル」とか「サッカー」って感じですよね。ボサノヴァってもう少し洗練されたイメージがあるじゃないですか。お昼にソファーに座って紅茶を飲みながらって感じで…
林;確かにそうですね。でもあたりまえですけど、ブラジルにもサッカーが下手な人もいるし、ソファーに座って紅茶を飲んでいる人達もいるんですよ。
13.nara leao/bobagens de amor"tea for two"
14.jaques morelenbaum e paulo jobim/caribe
15.wanda sa & celia vaz/amazon river


女性;なるほど。ということは、ボサノヴァってブラジルのソファーに座って紅茶を飲んでいる人達が作った音楽なんですか?
林;そうですね。ナラ・レオンって知ってますか?
女性;聞いたことあるような…
林;その人のマンションに夜な夜な音楽好きの若者が集まってボサノヴァは発展したって言われているんですけど、その人のマンションのリヴィングって90平米らしいんです。
女性;90平米って、キャッチボールが出来そうですね。すごいお金持ちってことなんですよね。
林;ええ。たぶん、お手伝いさんも二人くらいいるし、マンションの中にプールもあるし、ナラ・レオンは一生のうち一回もお皿なんて洗ったことないと思うんです。
女性;そういう人達がボサノヴァを作ったんですか?
林;そうなんです。

16.antonio carlos jobim/chansong
17.rosa passos & lula galvao
18.mario adnet & paulo gumaraes/sue ann


女性;なんとなくボサノヴァの感じが見えてきました。ところでボサノヴァっていつ頃に生まれた音楽なんですか?
林;あ、1958年なんです。
女性;へえ。じゃあ今年でボサノヴァはちょうど50歳ですね。じゃあ、ボサノヴァの中心だった人達は20代だったと考えたら今は70代くらいだからもうおじいちゃんとかおばあちゃんくらいですね。
林;そうですね。結構亡くなっている人もいますよ。
女性;今でもブラジルでは普通にボサノヴァって聴けるんですか?
林;それが今では全然聞けないんです。ボサノヴァは1958年に生まれて1960年代の半ばくらいには終わってしまった音楽なんです。
女性;それっきりなんですか?

19.paulinho nogueira/menino das laranjas
20.ana lucia/tem do
21.maricene costa/bossa na praia
22.gilda horta/litoral


今回選曲していただいた土信田有宏さんは現在はヤンググループというアコースティックギター2本のデュオで活躍しているミュージシャンです。土信田さんはこのグループとは別にザ・トゥー&スリーというシンセサイザー2本のデュオもやっていて、そちらの音源は今度クルエルから発売されるコンピCDに収録されています。ヤンググループの方もセカンドアルバムの録音がもう終わったそうで、そちらの発売も楽しみです。ちなみにこんな良い話があります。土信田さんが下北沢のデルモニコスというバーで一人で飲んでいたら隣に座った木下渉さんと音楽談義になって「ムースヒルって良いよね」と盛り上がったのが二人がグループを結成するきっかけだったそうです。ところで私と土信田さんは何度もニアミスをしました。一番初めは私が下北沢の茄子おやじというカレー屋さんでバイトをすると決まった時、ちょうど彼もそこでバイトをしていたんです。色々あって私はそこでは働かずにバーテン修行に入ったのですが、あの時会っていればどうなっていたんだろう、といつも想像してしまいます。
23.Beto Guedes/Contos da lua vaga
24.Milton Nascimento/A Felicidade
25.Flavio Venturini/Alice
26.Lo Borges/Equatorial
27.Spinetta/Viento del azur
28.Toninho Horta/Pedra Da Lua
29.ROBERT WYATT/HE AGE OF SELF
30.Solange Borges/Pium-i



林;土信田さんどうもありがとうございました。

林;この間、泥棒が来たんです。
女性;ええ!何盗まれちゃったんですか?
林;いえ、ここにはお酒を飲みにお客として来たんです。
女性;なんでその人が泥棒だってわかったんですか?
林;自分で言ったんです。「俺、泥棒なんだよね」って。
女性;かわってますね。やっぱり空き巣とかなんですか?
林;それが盗むのは「恋専門」らしいんです。
女性;それはいわゆるナンパ野郎ってことですよね。「君のハートを盗んじゃったよ」とかなんとかいうチャラチャラした男ですよね。私、苦手です。そういうタイプ。
林;いや、そうじゃなくて「こいつ、もう恋心なんて必要ないよな」と思ったら盗んじゃうらしいんです。
女性;ええ!恋心って盗まれちゃったら、もう二度と恋は出来なくなっちゃうんですよね。
林;そうらしいんです。でも、ほとんどの人が自分の「恋」が盗まれちゃったって気づかなくて、いつのまにか全然恋なんて出来ない、日々全くドキドキしない人間になっちゃうそうなんです。
女性;なるほど。その泥棒の特徴を教えておいてもらえますか?今後、気をつけるようにしますから…
林;ですね。で、その泥棒が「好きな曲があるからかけろ」って言うんです。
女性;なんて曲ですか?
林;バート・バカラックのI'll never fall in love againです。
女性;その泥棒さん、色んな難しい過去があるようですね。

31.burt bacharach/I'll never fall in love again
32.marcos valle/the face I love/
33.sergio mendes & brasil'66/the look of love
34.burt bacharach/what the world needs now is love

 

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