高杉くんのお店(Jul.2007)

 
 大昔、ほんの2ヶ月間だけ、WAVEのクラシック売り場で働いたことがあったのですが、そこで高杉くんという男の子とすごく仲良くなりました。彼は日芸のピアノ科だったのですが、そのクラシック売り場のスタッフのウルサガタ連中も「いや、高杉のピアノってすごく上手いよ」という評判でした。一方で彼はDJもやっていて、当時高杉くんが編集してくれたDJテープもその後何年も大切に聴き続けました。
 ほんの短い期間の付き合いだったのですが、彼の音楽のセンスや生き方は当時の私に大きく影響を与え、何年も経ってからも「そういえば高杉くんはこうやって言ってたよなあ」なんて思い出すことがよくありました。その後、私はWAVEを辞め、色んなバイトを掛け持ちし、やがてレコファンに落ち着いて、いつの間にか高杉くんとは音信不通になってしまいます。

 その高杉くんがなんと先日、本当に偶然にBAR BOSSAに来店してくれました。なんと連れて来たのはあの中島ノブユキさんでした。高杉くんと中島さんは学生時代からの親友で、中島さんの学生時代に作った曲の初演は全部高杉くんが演奏したということです。高杉くんとBAR BOSSAのカウンターをはさみ「いやあ久しぶりだね、あの人どうしてる?」といった感じで話し込み、二人で「でもこの偶然って何だろうね」なんて言い合ってたら、中島ノブユキさんが「そんな偶然かなあ?俺は高杉と林さんが昔友人でここで再会しているのって全然不思議じゃないけど…」と言っていましたが…

 さて、そんな話だけならここには書きません。話はもう少し先に進みます。高杉くんはその後色んな波乱万丈の人生があり、つい先日まで4年間ポルトガルの寿司屋で板前さんをやっていたそうなんですね。で今やっと帰国してとりあえず港区のワインバーで働きながら自分のお店を模索しているという話でした。

 そしてそれから1ヶ月が過ぎ、先日開店したというその高杉くんのお店「清浄(SAO JOAO)」に行って来ました。友人の店だからそんなにほめるべきではないと思うのですが、それでもすごく良いお店です。私は常々、適度な距離感を保ちつつお客様にとって心地よい接客というのはどういう風にすれば良いのだろうか?と悩んでいるのですが、高杉くんの接客はもう本当に完璧でした。どうすればああいう風な接客が出来るんだろう?と後で何度も何度も悩んで、今は高杉くんのコピーのような接客に挑戦しているのですが、妻は「あれはああいう人種(高杉くんに会えばわかります)ならではの接客なんだからあなたには無理よ」と言っています。ちなみにその妻は普段、お店や人にすごく厳しい人間なのですが、「あのお店が近所にあったら女の子の友達と週に3回は行ってしまう…」ということでした。

 ええと、基本的には「飲み屋」です。「すごくお酒飲む人紹介してね」ということだったので、すごくお酒を飲む人は行ってみて下さい。ちなみにお店にはグールドの写真が飾ってあって、「あれ、高杉くんってグールド好きだっけ?」と訊ねると、「うーん、あの写真がかっこいいんだよね」ということでした。あ、そうそう、お店のBGMは私がほとんど知らない最近のブラジルのポップ・ミュージックがガンガンかかっています。

お店のHPはこちらです。http://homepage3.nifty.com/restaurantesaojoao/

 

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