オデオンのレーベルとジャケット(Oct.2003)



 今回は、かなりマニアな内容です。音楽は楽しく聴ければOKだ。オタクな話は興味ないという正しい方はパスして下さい。

 オデオンは、レコード屋泣かせで有名です。60年代、何度もレーベルの仕様を変更して、ジャケットもあの独特のビニールで包まれたスタイルを採用しています。ただジャケやレーベルが違うだけならコレクターに任せておけばいいのですが、例えば、ジョアン・ジルベルトのファーストをいくつかのレコードで聞き比べると、もしかして全部リマスタリングし直しているのかもと、想像してしまうくらい音が違います。私個人は音楽は聞ければ良しというスタンスでレコードには接しているつもりだったのですが、ジョアンの3枚に関して言えば、やっぱり音が違うとすごく印象が違います。音楽の種類が違う気がするくらいです。あのCDがダメだと言うジョアンの気持ちもわからないでもないです。そんな音の違いに気付いてしまって全てのパターンを集めている方もいらっしゃるかと思いますので、いくつかの代表的なレーベル・パターンとジャケ・パターンをで紹介したいと思います。

(写真1)まず、初期モノラル盤のレーベルです。実は、正確なことを申し上げますと、このモノラルのレーベル・デザインもいくつか字体(フォント)が違うものが存在しています。恐らくこのタイプが一番初期で、その次は、と言った具合に想像ではありますが、予測はついております。でも確実ではないので、その情報は今回は秘密にさせて下さい。そして、このレーベルが65年くらいまで続きます(ちなみに、このタイプのレーベルで濃い緑色がかった物もありますが、オデオンはこの色に関しては、そんなにこだわりがないようです。例えばA面が青でB面がその濃い緑といったような不思議な盤も存在するんです。ですので、ここではこの濃い緑のレーベルに関しては触れません)。

(写真2)白地に緑の星オデオンという表現を、私達はしておりますが、こういうレーベルです。66年頃から72年頃まで、このレーベルは採用されているようです。このレーベルの場合、基本的にはモノラルで、ステレオの場合もよくあります(ちなみにこの緑も少しづつ色が違うのがありますが、深追いはやめますね)。

(写真3)その次は72年頃からオレンジ色になります。このレーベルは、基本的にステレオ盤のようです。始めはビニールにつつまれていますが、途中から紙ジャケになります。

 その後も、オデオンは色んなレーベルに変化します。80年頃はアルバムによってオリジナルレーベルのようなものも出現します。レーベルに関しては色々とこだわりがあると思います。ご注文の際に、どんなレーベルですか?と気軽にご質問ください。ちなみに、青色レーベルは、重量盤です。白地に緑の星とオレンジもそれなりに重いです。もちろん、初期であればあるほど重いです。

 ジャケットです。1950年代はオデオンは厚紙の重厚なジャケです。レコード1枚1枚を大切に扱っていた古きよき時代の仕様ですよね。ジョアンのファースト“シェガ・ジ・サウダージ”のファースト・プレスはこの厚紙ジャケというのは有名です。60年代に入るとオデオンは、ビニールで、ペラペラの紙を包むと言う、独特のスタイルになります。ボサノヴァの歴史Uで、このスタイルは日本人が発明したとありましたね。日本人って不思議です。お客様に、このビニールが好きだという方がいらっしゃって、当初、私達はこのビニールをそんなに重要視していなかったので、何人かの方にご迷惑をおかけしたのをここで謝らせて下さい。このビニール・ジャケですが、72年頃にオデオンは採用をやめて、他のレコード会社同様の普通のジャケになっています。

 オデオンをさらに複雑にしているモノラル、ステレオ問題です。先ほど、申し上げたように、オデオンは、かなりの時期まで、ステレオ盤とモノラル盤が2種類存在しています。色んなブラジル盤中古レコード専門店を見ていても、どちらがオリジナルか、あるいは、このアルバムに実はモノ盤が存在しているので、このステレオ盤はセカンドプレスだといった表現は避けているようです。理由は、もしかして、オデオンはファーストプレスからモノとステレオ、2種類作っていた可能性もあるのでは、という具合に、どのレコード店も想像しているからだと思います。でも、もちろん、こればっかりはタイムマシンに乗らないとわかりません。この辺、どういう理由で、モノとステレオが混在しているのか、オデオンの意図は理解できません(だって、毎回2種類も制作するのって面倒ですよね)。

 レコード屋の店頭でのステレオ盤の見分け方はこうです(いちいちカウンターまで持って行って開封してレーベルを確認するのってオタクっぽくて恥ずかしいですよね。でも知りたいし...)。ステレオ盤である場合、65年頃まではこういうシール(写真4)で、66年以降はこういうシール(写真5)を付けています。もともとモノラルの番号にあえて、ステレオだと表現する場合、MOFBの前に手書きかスタンプで“S”と記入しているものもあります(写真6)。





SMOFBはステレオ盤ということになりますね。このことからお気付きかと思いますが、MOFBという記号の場合は、すべてモノラル盤が存在するようです。逆に何年のタイトルからステレオ盤が存在するか、という疑問ですが、世界で一番ブラジル盤を触っている人に質問したところ、おそらく63年からではないか、ということです。

 今回も、実際のところ、タイムマシンに乗らないとわからないことなのに、こういう風に紹介してしまいました。批判、間違いが怖いです。でも、こういう情報を公開すると、あ、そうかだからこれは高くて、これは安いんだなとか、他のレコード店との比較とかもしてもらえるかなと思い、勇気を出して書きました。同業者の方や、とにかく詳しいという方、ボッサ・レコード間違っているぞ、という個所がありましたら、是非、教えて下さい。

 

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